日商簿記2級・商業簿記の最大の山場が連結会計です。「親会社と子会社をひとつの会社とみなして財務諸表を作り直す」という発想さえつかめば、複雑に見える連結修正仕訳も一本の筋で理解できます。本記事は、ひとつの設例を最初から最後まで通しで使い、投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分・開始仕訳・成果連結までを図と仕訳表でていねいに解説します。試験で問われるポイントと典型的なミスも各所にまとめました。
※会話は理解を助けるために構成したものです。志水は本メディアの監修者、あかりは読者代表として設定した架空の人物です。
01連結会計とは? なぜ2級で問われるのか
連結会計とは、支配従属関係にある複数の会社(企業グループ)を、あたかもひとつの会社であるかのようにまとめた財務諸表(連結財務諸表)を作成するための会計です。
親会社が単独で作る「個別財務諸表」だけを見ても、子会社を通じてグループ全体がどれだけ儲けているか、どれだけ資産を持っているかはわかりません。そこで投資家などの利害関係者にグループ全体の実態を示すために連結財務諸表が必要になります。
2016年度以降の出題区分改定で連結会計が2級(商業簿記)に本格導入され、以降第2問・第3問での出題頻度がきわめて高い最重要論点となりました。連結精算表・連結財務諸表の作成問題は配点も大きく、合否を分けやすいテーマです。
02連結財務諸表ができるまでの全体像
連結財務諸表は、親会社と子会社の個別財務諸表を単純合算し、そこにグループ内でダブっている部分などを取り除く連結修正仕訳を加えて完成させます。ゼロから帳簿を作り直すわけではない、という点が最大のポイントです。
連結修正仕訳は、大きく次の2種類に分かれます。この分類を意識すると解答手順が整理できます。
| 区分 | 内容 | 本記事の対応 |
|---|---|---|
| 資本連結 | 親会社の投資(子会社株式)と子会社の資本を相殺し、のれん・非支配株主持分を計上する | STEP1〜4 |
| 成果連結 | グループ内部の取引高・債権債務・未実現利益を消去する | 成果連結の章 |
03最初に押さえる5つの用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 親会社 | 他の会社の意思決定機関(株主総会など)を支配している会社。原則として議決権の過半数(50%超)を保有する。 |
| 子会社 | 親会社に支配されている会社。 |
| 支配獲得日 | 親会社が子会社を支配下に置いた日。ここを起点に連結がスタートする。 |
| 非支配株主持分 | 子会社の資本のうち、親会社以外の株主(外部株主)に帰属する部分。連結上は純資産の部に独立表示する。 |
| のれん | 子会社株式の取得原価が、取得した子会社純資産の持分額を上回る差額。ブランド力や超過収益力の対価と考える。 |
▼ 本記事を通して使う設例
- P社(親会社)はX1年3月31日にS社(子会社)の発行済株式の80%を8,000円で取得し、支配を獲得した。
- 支配獲得日のS社純資産:資本金5,000円・利益剰余金3,000円(合計8,000円)。S社の資産・負債の時価は帳簿価額に等しいものとする。
- のれんは10年間で毎期均等額を償却する。
- 連結第1年度(X1年4月1日〜X2年3月31日)にS社は当期純利益1,000円を計上し、配当400円を実施した。
※金額はすべて説明用に簡略化しています。以降の仕訳はこの設例の数値でつながっています。
04STEP1|投資と資本の相殺消去(資本連結)
親会社の貸借対照表には「子会社株式8,000円」が計上され、子会社の貸借対照表には「資本金・利益剰余金」があります。両者は同じ出資関係を親会社側・子会社側から見たもので、そのまま合算すると資本が二重計上になります。そこで両者を相殺消去します。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 子会社純資産(支配獲得日) | 資本金5,000+利益剰余金3,000 | 8,000円 |
| 親会社持分(80%) | 8,000×80% | 6,400円 |
| 非支配株主持分(20%) | 8,000×20% | 1,600円 |
| のれん | 子会社株式8,000-親会社持分6,400 | 1,600円 |
子会社の資本(資本金・利益剰余金)を全額消去し、代わりに親会社以外の持分を「非支配株主持分」として計上、差額を「のれん」とします。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 資本金 5,000 | 子会社株式 8,000 |
| 利益剰余金 3,000 | 非支配株主持分 1,600 |
| のれん 1,600 | |
| 合計 9,600 | 合計 9,600 |
・のれん=子会社株式の取得原価 -(子会社純資産×親会社持分割合)
・非支配株主持分=子会社純資産 ×(1-親会社持分割合)
この2つはワンセットで即答できるように暗記しましょう。
また、取得原価が持分額を下回る場合は差額を「負ののれん発生益」として発生年度の損益(特別利益)に一括計上します(のれんは資産計上しません)。
05STEP2|のれんの償却
計上したのれんは20年以内の効果の及ぶ期間にわたり、定額法などで規則的に償却します。設例では10年償却なので、毎期の償却額は次のとおりです。
のれん償却額 = 1,600円 ÷ 10年 = 160円/年
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| のれん償却 160 | のれん 160 |
「のれん償却」は連結損益計算書上の販売費及び一般管理費に表示され、連結上ののれん残高は1,600-160=1,440円になります。
06STEP3|子会社当期純利益の按分
単純合算では子会社の当期純利益がまるごとグループの利益に含まれます。しかし利益のうち非支配株主に帰属する分はグループ(親会社株主)のものではないため、その分を非支配株主持分へ振り替えます。
非支配株主に帰属する当期純利益 = 1,000円 × 20% = 200円
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 非支配株主に帰属する当期純利益 200 | 非支配株主持分 200 |
07STEP4|配当金の修正
子会社が配当を行うと、その多くは親会社が受け取ります。親会社の個別上は「受取配当金」として収益計上されますが、グループ内でのお金の移動にすぎないため連結では消去します。また、非支配株主へ流出した配当分だけ非支配株主持分を減らします。
| 配当400円の内訳 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 親会社が受け取った分 | 400×80% | 320円 |
| 非支配株主へ流出した分 | 400×20% | 80円 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 受取配当金 320 | 剰余金の配当 400 |
| 非支配株主持分 80 | |
| 合計 400 | 合計 400 |
08STEP5|開始仕訳(2年目以降の考え方)
連結修正仕訳は帳簿に残らないため、翌年度の連結でも前年度までに行った修正を最初にもう一度やり直す必要があります。これが開始仕訳です。
例えば、支配獲得日の投資と資本の相殺消去(STEP1)は、翌年度の開始仕訳では次のように「当期首残高」へ読み替えます(金額は同じ)。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 資本金当期首残高 5,000 | 子会社株式 8,000 |
| 利益剰余金当期首残高 3,000 | 非支配株主持分当期首残高 1,600 |
| のれん 1,600 | |
| 合計 9,600 | 合計 9,600 |
実際の試験では、STEP2〜4(のれん償却・利益の按分・配当の修正)も同様に損益項目を「利益剰余金当期首残高」へ読み替えて合算し、ひとつの開始仕訳にまとめます。
連結精算表の問題では「開始仕訳」→「当期の連結修正仕訳」の順に積み上げていくのが解答の型です。
09成果連結|内部取引・債権債務・未実現利益の消去
資本連結(STEP1〜5)に加えて、グループ内部で行われた取引を消すのが成果連結です。外部との取引だけがグループの成果である、という考え方に基づきます。代表的な3類型を押さえましょう。
(1) 内部取引高の相殺消去
親会社が子会社へ商品を販売した場合、親会社の「売上高」と子会社の「売上原価(仕入)」は同額のグループ内取引です。両建てで消去します(例:P社→S社への売上3,000円)。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上高 3,000 | 売上原価 3,000 |
(2) 債権債務の相殺消去
グループ内取引から生じた売掛金と買掛金(貸付金と借入金なども同様)を相殺します(例:P社のS社に対する売掛金800円)。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 買掛金 800 | 売掛金 800 |
(3) 未実現利益の消去
親会社が子会社へ利益を上乗せして販売した商品が、期末に子会社の在庫として残っているとき、その上乗せ利益はまだグループ外部に売れていない=実現していません。この「未実現利益」を消去します。
例:P社はS社へ売上総利益率20%で販売しており、期末にS社が保有するP社仕入分の商品が売価1,000円分ある場合、未実現利益=1,000×20%=200円。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上原価 200 | 商品 200 |
・ダウンストリーム(親→子):未実現利益を全額消去(上記のとおり)。
・アップストリーム(子→親):未実現利益を全額消去したうえで、その利益は子会社が計上したものなので非支配株主持分にも負担させる追加仕訳を行う。
例)未実現利益200円・非支配20%なら、
(借)非支配株主持分 40 /(貸)非支配株主に帰属する当期純利益 40
10試験で問われるポイントと解答テクニック
- 連結精算表の作成:個別合算+修正消去欄を埋め、連結欄を完成させる(第2問・第3問)。
- 連結財務諸表(連結B/S・連結P/L・連結S/S)の作成:特定科目の金額を答えさせる。
- 個別論点の仕訳:のれん・非支配株主持分・未実現利益の消去仕訳を単独で問う。
失点を防ぐチェックリスト
- タイムテーブルを書く:支配獲得日→当期首→当期末の順に、資本金・利益剰余金・非支配株主持分・のれんの残高を横に並べると、開始仕訳と当期修正が一目で整理できます。
- 「当期首残高」への読み替えを機械的に:開始仕訳では損益項目をすべて「利益剰余金当期首残高」に変える、と手を動かして覚える。
- 持分割合の掛け間違いに注意:非支配株主持分・非支配株主に帰属する当期純利益・アップストリームの按分は必ず子会社側の割合(例:20%)を使う。
- 貸借の合計一致を必ず検算:相殺仕訳は借方合計=貸方合計になるはず。合わなければのれんか非支配株主持分の計算ミスを疑う。
- のれんを「取得原価-子会社純資産全額」で計算してしまう(正しくは持分額を引く)。
- 配当修正で貸方を「受取配当金」にしてしまう(正しくは剰余金の配当)。
- ダウンストリームなのに未実現利益を非支配株主へ按分してしまう(親→子は全額消去のみ)。
11確認問題(解答・解説つき)
【問】P社はX3年3月31日にS社の発行済株式の70%を14,000円で取得し、支配を獲得した。支配獲得日のS社純資産は資本金12,000円・利益剰余金6,000円であり、資産・負債の時価は帳簿価額に等しい。
(1) 非支配株主持分の金額、(2) のれんの金額を求め、(3) 投資と資本の相殺消去の仕訳を示しなさい。
解答・解説を見る
子会社純資産=12,000+6,000=18,000円
(1) 非支配株主持分=18,000×(1-70%)=18,000×30%=5,400円
(2) のれん=14,000-18,000×70%=14,000-12,600=1,400円
(3) 相殺消去仕訳
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 資本金 12,000 | 子会社株式 14,000 |
| 利益剰余金 6,000 | 非支配株主持分 5,400 |
| のれん 1,400 | |
| 合計 19,400 | 合計 19,400 |
検算:借方合計19,400=貸方合計19,400で一致。持分割合は必ず子会社株式の取得割合70%/非支配30%を使い分ける。
- 連結=親子をひとつの会社とみなす。個別F/Sを合算し、連結修正仕訳で調整する。
- 資本連結:①投資と資本の相殺消去(のれん・非支配株主持分)→②のれん償却→③当期純利益の按分→④配当の修正→⑤開始仕訳。
- 成果連結:内部取引高・債権債務・未実現利益を消去。未実現利益はダウン=全額、アップ=非支配へ按分。
- タイムテーブルと貸借一致の検算で計算ミスを防ぐのが合格への近道。
※本記事は日商簿記2級(商業簿記)の学習用に一般的な会計処理を解説したものです。のれんの償却期間や個別の会計処理は問題文の指示・最新の出題区分表・会計基準に従ってください。試験対策としてご活用いただき、実務・受験の最終判断は公式の試験要項や会計基準等の一次情報をご確認ください。